月別: 2018年1月

お林を歩く

先週末の土日は冬のお林を満喫してきました。「お林」は、真鶴半島の先端を覆うこんもりとした森のことで、古くから「魚付き林」として地域の人たちに大事にされています。お林は人工的に作られた森ですが、その歴史は江戸時代初期にまでさかのぼります。そのころに植えられたクロマツは樹齢300年を超える今でも健在で、後から植えられたクスノキ、自然分布のスダジイと合わせて、お林を代表する樹木御三家となっています。

土曜日は自然こどもクラブで子供たちと散策してきました。手を広げてクスノキの直径を測ったり、ドングリを探したり、一緒になって楽しみました。一生懸命キノコを探していたけど、見つかったかな?お林を抜けたら、今度は番場浦の採石場探検。昔はこんなところから人力で石を切り出していたんですね。貝博に戻る頃にはさすがにおつかれかな?と思っていましたが、みんな驚きの集中力で課題シートに取り組んでくれました。

博物館でのまとめのようす。

日曜は専門の研究者を招いて海のミュージアムでした(今回は「海」ではありませんが)。お林を歩きながら、この時期に見られる植物の特徴や、森林の遷移、植物には菌類との共生など、大変勉強になるお話を聞かせていただきました。地衣類やカメムシに異常な興味を示す参加者がいたり、ハランの根元に実を見つけたり、手を広げてクスノキの直径を測ったり…あれ、昨日もこの光景を見たような?みなさんすっかり童心に戻ってましたね。

 

ハランの実

貝博に戻ってからは本日のまとめ。参加者それぞれが、心に残ったこと、人に教えたくなったことなど意見を出し合い、地図に並べていきます。お林みどころマップの作成です。できあがったマップは近日中に貝博のエントランスホールに展示いたしますので、これからお林を歩かれる方はぜひ参考にしてください。

 

オオウミシダトウマキクリムシ

先日このブログでウミシダを紹介したところ、意外な反響があり、ニヤついている学芸員です。見栄えのする写真を並べたかいがありました。ようこそマニアック生物道の入り口へ…

さて。そんなウミシダは野外で種を見分けることが難しい生き物です。一部を除いて。簡単に認識できるウミシダといえば、写真のオオウミシダが筆頭にあげられます。全身は真っ黒(実は赤茶色ですが水中では黒く見える)、腕は10本で常にまっすぐ伸びています。腕の長さは20cmを超えることも珍しくなく、その名の通り大型のウミシダです。

さて、今日の主役はこのオオウミシダ…ではなく、そこに寄生する巻貝です。当ブログは遠藤貝類博物館のブログでございますから。寄生というとなんだかグロテスクな響きがありますが、この寄生貝・オオウミシダトウマキクリムシはたいへん可愛らしく、見つけた日には写真を撮りまくってしまうこと受け合いです。この貝はご覧のとおり美しい色をしているのですが、貝殻標本にすると濁った白一色になってしまいます。この色は、貝殻を透かして見える軟体部(貝の肉の部分と言ったらよいでしょうか)の色なんですね。かわいらしい外見の貝ですが、これに取りつかれると宿主のウミシダは元気がなくなってしまうようで、腕が折れているケースが多く見られます。宿主から栄養を奪っているのか、あるいは、貝が弱ったウミシダを選んで寄生するのかもしれません。興味深いですね。見かける頻度としては、ウミシダ20個体につき1匹ぐらいでしょうか。寄生率は高くありません…と書くつもりだったのですが、約5%だったら必ずしも低いとも言えない値ですね。

ちなみに、この長い名前はオオウミシダ・トウマキ・クリムシと区切ります。漢字では大海羊歯籐巻栗虫。籐(ラタン)を巻いたような彫刻がある殻を持つ栗虫貝でオオウミシダに寄生する、ということなんでしょうね。貝殻の写真も並べたかったのですが、この種は貝博にはまだ収蔵されていない模様でした。今後、採集できたら追記いたします。

新年のご挨拶

新年あけましておめでとうございます。みなさまにとって幸多い一年となりますことをお祈り申しあげます。

今年も貝博ではさまざまなイベントが目白押しです。今日はさっそく次のイベントの準備を進めておりました。使える貝の在庫を確認して、汚れていれば掃除して。ふと気がつけば、いつのまにかメルヘンワールドに足を踏み入れてしまっていたようです。あぶないあぶない。イベントの告知は貝博のエントランススペースにも掲示してありますので、ご来場の際はぜひご覧になってください。

こんな貝博を本年もどうぞよろしくお願いいたします。